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世の中には涙を誘う感動的な物語や勇気付けられるさわやかな物語がたくさんあります。
本来ミステリ好きな管理人「おとぎ」が、色んな本を読んで感じたことを綴ります。
コメント、トラバ大歓迎!
特に、同じ本の感想のトラバは、こちらへのリンクが無くてもOKです!

管理人の読書感想サイト「おとぎのミステリルーム」もよろしく!
2006読了本ランキング(暫定・制作中)もあります。
おとぎのミステリルームのサーバーのジオシティーズが閉鎖になるので、過去の感想をこちらに再掲載しようと思っています。
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『読書嫌いのための図書室案内』青谷真未

『読書嫌いのための図書室案内』(青谷真未)


(あらすじ)早川のサイトより転載


高校2年生の荒坂浩二はある事件がきっかけで美術部を退部。本嫌いだが特に仕事もなく暇な図書委員会に籍を置いている。ところがやる気に満ちた新任司書から、クラスメイトの本の虫・藤生蛍とともに、十数年前に途絶えた図書新聞の再刊係を任されてしまう。「身近な人のおすすめ本」を紙面の目玉にしようと考えた二人は、クラスメイトや美術部の先輩、生物教師に読書感想文の執筆を依頼。しかし彼らは提出に際しなぜか不可解な条件を出してくる。その謎を解こうとする浩二と蛍だったが、それは先輩や教師の抱える秘密、そして18年前の学校で起きた自殺事件の謎へと繋がり……。本嫌い男子と本好き女子が紡ぐ青春と秘密の物語。




本を読んだ感想は、読み手の数だけある。書き手の真意を探ろうとするけれど、どこまでも推測に過ぎない。どこまでも深く深く読みこんだとしても、別の人が読めば、違う視点から新たな意味が明らかになり得る。それが文学、ひいては小説の面白さであり、奥深さであるのではないか。だからみんな素直に自分が感じたことをそのまま表明すればいい。

現代では、作者と直に繋がることも可能であり、感想が作者にフィードバックされたりもするので、古典文学とは違った面もあるが、文学の可能性という点では、明治の文豪も現代のweb作家もそう大きな違いはないのではないだろうか。作家としてのレベルの違いはあるとしても。

読み手にとっても大切なものを指し示してくれるが、それは書き手にとっても同じ。自分の作品に価値を感じなくても、もしかしたら誰かが必要とするかもしれない。それは生み出した作品が満足いくものでなくても、多くの人に評価されなくても、それは誰かにとっての宝物になり得るのだ。だからみんな自信を持って書いたらいい。

そんなことを示唆してくれたのがこの小説だ。本嫌いの主人公が、本好きの女の子とともに図書新聞の制作に関わったことで大きく成長してゆく姿は、真摯でまっすぐで感動的でもある。

ミステリ要素のあるいくつかのエピソードを通じて、事件の真相だけにとどまらず、小説の新解釈、さらには主人公たちの内面の謎まで明らかになるにつれ、彼らがこれからどうやって生きていくか深く考えざるを得なくなってくる。それは我々読み手の人生にまで影響を与えるかもしれないものである。


この小説は非常に読みやすい。古典小説を扱っているのにも関わらず、難しい漢字、語句、言い回しを極力使わず、平易な言葉でなおかつ詳細に分かりやすく紡がれている。読者に優しい小説なのである。

ともすればラノベのような読みやすさは、軽く読み流されてしまう危険性もともなうが、この小説はラノベとして読むには深くまで斬り込みすぎているし、かといって純文学と呼ぶほどの重厚さはないかもしれない。取り扱うエピソードの一つ一つを見れば、ミステリとしては陳腐であったり、青春小説としては躍動感が足りなかったり、内面を抉る本格小説としてみれば主人公の葛藤シーンが少なくて物足りなかったりするかもしれない。一つ一つはある意味中途半端で、どこかで読んだような平凡な題材や描き方であったりするのだ。そのため、読む人によっては読み終わっても、よくある類型的な平凡な小説と感じて物足りないかもしれない。ミステリにつきものの強引な解釈が目について不満を感じるかもしれない。正直、私自身、この小説から爆発的に人に感動を与える力は感じない。


それでも私がこの小説を絶賛するのは、この小説があらゆる面で中途半端な要素を抱えながら、それらを包括して小説として総合的に見た場合、その完成度の高さに舌を巻かざるを得ないからだ。何を言いたいのかと言うと、要素のつながりの必然性や合理性、心理的結びつき、そういった面に心配りが行き届いている作品だということだ。


私はこの小説の途中で「はっ」とさせられることが幾度もあった。それはそれまでに記された内容と思わぬ場面で繋がるシーンが数多く見られたからだ。一言で言えば伏線ということになるだろう。ミステリ要素の伏線だけでなく、「ああ、これは作者がこういう意図を持って描いていたのか」と後から納得できる場面が、とても豊富だったのである。それは繊細さの現れである。小説全体の構成が考え抜かれているというのがヒシヒシと伝わってくる。私はその恐ろしいまでの迫力に圧倒されたのである。


そんな風に感じたのは私だけかもしれない。今まで数多くのミステリや青春小説を読んできたが、こんな経験はあまりない。もっと論理的で感心したミステリはいくらでもあるし、もっと心の底から感動した青春小説もいくつかある。独特の軽快な文体が素晴らしかったり、キャラがめちゃくちゃ魅力的だったりする物語もたくさんある。それらはそれらで、もちろん優れた作品であることは間違いない。印象に残る小説を挙げるとすれば、そういった作品が真っ先に上がるに違いない。しかし、総合的にじわじわと読み手の私に訴えかけた小説は、なかなか思いつかない。


私の現時点での最高評価の小説は北村薫氏の『スキップ』であるが、それは内容やストーリー云々より、人はいつからでも再スタート出来るという信念を私の生き方にもたらした点が大きい。この『読者嫌いの〜』はそれとはまったく違った意味で私の心の深奥に迫った作品だったのである。


多くの人は、読後感の良い青春小説ぐらいの印象しか持たないかもしれない。主人公が鬱々とした考え込む性格でないのは読み手にとって重たくならず、結果的にいいペースで読み進められたはずだ。それはそれでありだと思うし、実際のところ、作者だってどこまで考えながら執筆したのかなんてのも分からない。私の解釈はあくまで私の解釈に過ぎず、だからこそ声を大にして他人に薦めることも出来る。そんなこともこの小説から感じさせてもらった。読者はどんな感想だって持っていい。ただ他人の感想にも耳を傾けることでさらに世界が広がる。自分の感想だってまたそれで変わっていくのだ。今は他人のレビューや感想もネットでいくらでも読める幸せな時代だ。そういう意味では、文学自体のこれからの発展に無限の可能性を感じるのである。


ここから蛇足になるし、ネタばれにもなるが、ミステリとしての側面にも触れておきたい。この作品はいくつかの短編ミステリを含みつつ、全体として一つの小説を作り上げる体裁をとっている。ミステリとしては、奇抜なトリックがあるわけでもないし、論理が特別鋭いわけでもないかもしれない。私自身はトリックには感心したし、論理性も高く評価してるし、伏線のちりばめ方も見事だと思うが、本格ミステリを読みなれた猛者にとってはそれほど魅力的なミステリに映らない可能性はある。だが、動機や心理面まで深く斬り込んだ推理は読み応えがある。文学の謎も絡めて、かなり贅沢な謎解きを味わえると感じた。ネタばれになるが、主人公のある秘密には驚かされたし、怪談の用い方にも工夫を感じた。じっくり読み込めば決して予想出来なくない真相でありながら、かつ意外性のある真相というのは微妙なバランスが必要で、そのあたりに作者の繊細さを感じるのである。純粋なミステリレベルはそれほど高くないのかもしれないが、青春小説という大枠の中でのミステリ要素の活かし方のうまさという点で、私はこの小説をミステリとしても高く評価したい。



| 青春小説 | 20:13 | comments(0) | - |
図書館の神様
図書館の神様
図書館の神様
瀬尾 まいこ
★★★★
念願の「図書館の神様」!
「天国はまだ遠く」と読む順番が逆になってしまいましたが、関連はないので特に支障なしです。

主人公の清(女性)が、講師として赴任した高校で文芸部の顧問となり、ただ一人の部員、垣内君と接する中で色々なことに気づかさせられる、という話です。

本当に「あっ」と言う間に読んでしまいました。
でも、内容はばっちり頭に入ってます。
この作品も期待どおり、瀬尾さんの文学的会話センス炸裂です。
こちらは不倫がらみであることや、1年間の様子が描かれていることなどから、読み応えのある作品だとは思います(「天国はまだ遠く」は非常にあっさりした仕上がりだったので、それに比べて)。

しかし、個人的感想ですが、この2作品は非常に良く似た作品、言いかえれば「対」になっている作品ではないかと思うのです。
「図書館」では、主人公の女性は、正義感が過ぎて仲間を死なせてしまう、という過ちに苦しめられます。一方、「天国」では主人公自らが自殺寸前まで追い詰められます。
両者ともに暗い状況ながら明るいお気楽さ満点のストーリーにつながるのですが、「図書館」で救えなかった一人の女性の命を、「天国」で救いたいという思いが瀬尾さんの心にあったのではないかと想像するのはうがち過ぎでしょうか?
死んだ女性に、もし「天国」のような出会いがあったなら・・・?
「図書館」で加害者を救い、「天国」で被害者を救い、ともに新しい道への一歩を踏み出す希望の物語に仕上げることで、1つの完結をみたのではないでしょうか?

しかも、両作品は、本当に青春の1ページを描いたに過ぎず、主人公の彼女らの真の人生はまさに「これから」始まってゆくのです。
作家瀬尾まいこさんにとっても「卵の緒」も含めた3作は、ほんの序章に過ぎず「これから」さらなる飛躍を遂げるのではないかという期待が膨らみます。

さて、他の方の感想もいろいろ覗いてみました。
垣内君が格好いいとかミーハーな感想もありますが、ちなみに私は杉本さんの台詞が強烈に印象に残っています。拓実の恋人ですが。
それに疑問なのですが、この本のタイトル「図書室の神様」のほうがふさわしいように思うのは私だけでしょうか・・・・。あ、でも高校ぐらいだと図書館になるのかな?

moji茶図書館のように文学面のアプローチや、Sasami Cafe の書店員の声など、面白い視点ですね。
ショートさんの感想は、この本の面白さを余すところなく語っています。
柊さんのかんそうは何か実感がこもっているし、ゆこりんさんの感想を読んで、「最後の手紙」にあらためて感動しています。
瀬尾まいこ応援ブログトラキチさんの感想は、またまた秀逸です。必読ですね。
| 青春小説 | 22:45 | comments(0) | trackbacks(7) |
天国はまだ遠く (瀬尾まいこ)
天国はまだ遠く
天国はまだ遠く
瀬尾 まいこ
★★★★
うーん、素晴らしいです。楽しい
なんてストレートでスマートな小説なんでしょう!
自殺志願者というすごーく深刻なテーマなのに、内容は非常にさわやか(笑)。
こんな作品を書く人は、滅多にいないのではないでしょうか?
ある意味、ありきたりの設定で、内容の似た小説はいくらでもありそうですが、その描く世界のなんて軽いこと!幸せな気持ちがいっぱいです。
それでいて思いっきり現実味があったり、でもユーモアいっぱいです。
それにこういう話だと物語を盛り上げるために恋愛要素の一つも入れたくなるものですが、そっちの方に流れないのがこれまた宜しいです(ちょびっとはあるけど)
子供から大人まで誰が読んでもいけそう。
私自身、田舎生まれで都会の生活も体験しているので、非常に親近感がありますし、でもどちらかというと主人公タイプかもしれないですね。
この本はとにかく会話の妙を味わって欲しい。ストーリーに趣向を凝らさなくても、気楽さと能天気さがベースにある瀬尾流ユーモアのすべてを。
文章は全然難しくないです。
文学的価値はいかほどか判断出来ませんが、明らかに読者の目線に合わせて書かれた作品で(でも、ベストセラー狙いとかではなく)、こういう小説はもっと評価されてしかるべきだと思いますね。

ネットでの他の方の感想は、良いというものから、前2作と比べて見劣りするとの声も。確かにあっさりしているのは認めざるをえませんね。いくつかリンクしておきます。私は「図書館の神様」読んでないので何とも言えませんが、デビュー作も良かったけど、今回はそれ以上だと個人的には思ってます。

みかんさんハオハオぶっくすのほ本本の話をしようきまぐれ読書日記

なお、トラキチさん、主催の瀬尾まいこブログもあるので、そちらもよろしく。
この中のトラキチさんの感想、秀逸です。



| 青春小説 | 21:12 | comments(0) | trackbacks(4) |
雨鱒の川
雨鱒の川
雨鱒の川
川上 健一
★★★★
執筆中断前の1990年に出された作品。
「翼はいつまでも」と同様、素直な少年・少女の姿を生き生きと描いていますが、この作品はより文学的だと思います。
全編、素朴な方言で展開されるため、やや読みづらい印象がありますが、慣れてくればそれほど苦になりません。逆に方言の味がこの作品の背景にぴったりで、深みを増しています。
ストーリーは奇をてらったものでなく割とストレートですが、かなりの好作品だと思います。
豊かな自然の中で、絵を描くのが好きな主人公心平と幼馴染で耳の聞こえない少女小百合、そして小百合に想いを寄せる英蔵・・・。

場面が目に浮かぶようですが、これが今秋映画化されます。
公式サイトがあります。あらすじもそこに書いてあった・・・
玉木宏と綾瀬はるか主演なので、かなり見たいのですが。
| 青春小説 | 22:47 | comments(0) | trackbacks(1) |
地図にない国
地図にない国
地図にない国
★★★
川上健一の「地図にない国」を読みました。
けがで引退の窮地に追い込まれたプロ野球選手が、スペインのバスク地方を訪れて、色んな経験してゆく大人のための青春小説です。
川上健一には「翼はいつまでも」という少年青春小説の傑作がありますが、野球にはかなりの思い入れがあるようです。
この「地図にない国」の舞台、バスク地方は、スペインからの独立運動が盛んで独自の文化をもっているところらしいです。
この本で描かれる様々な風習には驚かされることが多いですが、一度見てみたいなあ、と思うような迫力があります。
登場する人物は個性的な面々で、楽しい中にも、一途さや夢を追うおもいなどが垣間見られ、ドラマのように情景が思い浮かびます。
ラストはやや意外な感じもしましたが、青春小説としての枠には収まっているように思います。
ストーリー展開はちょっと乱れがあるような気もしますが、そういう不完全さもこの小説の魅力といえるかもしれません。
それに、ミステリ要素が多少あって、ミステリ好きの私にはちょうど良かったかも。川上さんにはミステリは期待してないんですけどね。
| 青春小説 | 22:24 | comments(1) | trackbacks(1) |