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世の中には涙を誘う感動的な物語や勇気付けられるさわやかな物語がたくさんあります。
本来ミステリ好きな管理人「おとぎ」が、色んな本を読んで感じたことを綴ります。 コメント、トラバ大歓迎! 特に、同じ本の感想のトラバは、こちらへのリンクが無くてもOKです! 管理人の読書感想サイト「おとぎのミステリルーム」もよろしく! 2006読了本ランキング(暫定・制作中)もあります。 おとぎのミステリルームのサーバーのジオシティーズが閉鎖になるので、過去の感想をこちらに再掲載しようと思っています。 2020.04.21 Tuesday
『読書嫌いのための図書室案内』青谷真未
『読書嫌いのための図書室案内』(青谷真未) (あらすじ)早川のサイトより転載 高校2年生の荒坂浩二はある事件がきっかけで美術部を退部。本嫌いだが特に仕事もなく暇な図書委員会に籍を置いている。ところがやる気に満ちた新任司書から、クラスメイトの本の虫・藤生蛍とともに、十数年前に途絶えた図書新聞の再刊係を任されてしまう。「身近な人のおすすめ本」を紙面の目玉にしようと考えた二人は、クラスメイトや美術部の先輩、生物教師に読書感想文の執筆を依頼。しかし彼らは提出に際しなぜか不可解な条件を出してくる。その謎を解こうとする浩二と蛍だったが、それは先輩や教師の抱える秘密、そして18年前の学校で起きた自殺事件の謎へと繋がり……。本嫌い男子と本好き女子が紡ぐ青春と秘密の物語。 本を読んだ感想は、読み手の数だけある。書き手の真意を探ろうとするけれど、どこまでも推測に過ぎない。どこまでも深く深く読みこんだとしても、別の人が読めば、違う視点から新たな意味が明らかになり得る。それが文学、ひいては小説の面白さであり、奥深さであるのではないか。だからみんな素直に自分が感じたことをそのまま表明すればいい。 現代では、作者と直に繋がることも可能であり、感想が作者にフィードバックされたりもするので、古典文学とは違った面もあるが、文学の可能性という点では、明治の文豪も現代のweb作家もそう大きな違いはないのではないだろうか。作家としてのレベルの違いはあるとしても。 読み手にとっても大切なものを指し示してくれるが、それは書き手にとっても同じ。自分の作品に価値を感じなくても、もしかしたら誰かが必要とするかもしれない。それは生み出した作品が満足いくものでなくても、多くの人に評価されなくても、それは誰かにとっての宝物になり得るのだ。だからみんな自信を持って書いたらいい。 そんなことを示唆してくれたのがこの小説だ。本嫌いの主人公が、本好きの女の子とともに図書新聞の制作に関わったことで大きく成長してゆく姿は、真摯でまっすぐで感動的でもある。 ミステリ要素のあるいくつかのエピソードを通じて、事件の真相だけにとどまらず、小説の新解釈、さらには主人公たちの内面の謎まで明らかになるにつれ、彼らがこれからどうやって生きていくか深く考えざるを得なくなってくる。それは我々読み手の人生にまで影響を与えるかもしれないものである。 この小説は非常に読みやすい。古典小説を扱っているのにも関わらず、難しい漢字、語句、言い回しを極力使わず、平易な言葉でなおかつ詳細に分かりやすく紡がれている。読者に優しい小説なのである。 ともすればラノベのような読みやすさは、軽く読み流されてしまう危険性もともなうが、この小説はラノベとして読むには深くまで斬り込みすぎているし、かといって純文学と呼ぶほどの重厚さはないかもしれない。取り扱うエピソードの一つ一つを見れば、ミステリとしては陳腐であったり、青春小説としては躍動感が足りなかったり、内面を抉る本格小説としてみれば主人公の葛藤シーンが少なくて物足りなかったりするかもしれない。一つ一つはある意味中途半端で、どこかで読んだような平凡な題材や描き方であったりするのだ。そのため、読む人によっては読み終わっても、よくある類型的な平凡な小説と感じて物足りないかもしれない。ミステリにつきものの強引な解釈が目について不満を感じるかもしれない。正直、私自身、この小説から爆発的に人に感動を与える力は感じない。 それでも私がこの小説を絶賛するのは、この小説があらゆる面で中途半端な要素を抱えながら、それらを包括して小説として総合的に見た場合、その完成度の高さに舌を巻かざるを得ないからだ。何を言いたいのかと言うと、要素のつながりの必然性や合理性、心理的結びつき、そういった面に心配りが行き届いている作品だということだ。 私はこの小説の途中で「はっ」とさせられることが幾度もあった。それはそれまでに記された内容と思わぬ場面で繋がるシーンが数多く見られたからだ。一言で言えば伏線ということになるだろう。ミステリ要素の伏線だけでなく、「ああ、これは作者がこういう意図を持って描いていたのか」と後から納得できる場面が、とても豊富だったのである。それは繊細さの現れである。小説全体の構成が考え抜かれているというのがヒシヒシと伝わってくる。私はその恐ろしいまでの迫力に圧倒されたのである。 そんな風に感じたのは私だけかもしれない。今まで数多くのミステリや青春小説を読んできたが、こんな経験はあまりない。もっと論理的で感心したミステリはいくらでもあるし、もっと心の底から感動した青春小説もいくつかある。独特の軽快な文体が素晴らしかったり、キャラがめちゃくちゃ魅力的だったりする物語もたくさんある。それらはそれらで、もちろん優れた作品であることは間違いない。印象に残る小説を挙げるとすれば、そういった作品が真っ先に上がるに違いない。しかし、総合的にじわじわと読み手の私に訴えかけた小説は、なかなか思いつかない。 私の現時点での最高評価の小説は北村薫氏の『スキップ』であるが、それは内容やストーリー云々より、人はいつからでも再スタート出来るという信念を私の生き方にもたらした点が大きい。この『読者嫌いの〜』はそれとはまったく違った意味で私の心の深奥に迫った作品だったのである。 多くの人は、読後感の良い青春小説ぐらいの印象しか持たないかもしれない。主人公が鬱々とした考え込む性格でないのは読み手にとって重たくならず、結果的にいいペースで読み進められたはずだ。それはそれでありだと思うし、実際のところ、作者だってどこまで考えながら執筆したのかなんてのも分からない。私の解釈はあくまで私の解釈に過ぎず、だからこそ声を大にして他人に薦めることも出来る。そんなこともこの小説から感じさせてもらった。読者はどんな感想だって持っていい。ただ他人の感想にも耳を傾けることでさらに世界が広がる。自分の感想だってまたそれで変わっていくのだ。今は他人のレビューや感想もネットでいくらでも読める幸せな時代だ。そういう意味では、文学自体のこれからの発展に無限の可能性を感じるのである。 ここから蛇足になるし、ネタばれにもなるが、ミステリとしての側面にも触れておきたい。この作品はいくつかの短編ミステリを含みつつ、全体として一つの小説を作り上げる体裁をとっている。ミステリとしては、奇抜なトリックがあるわけでもないし、論理が特別鋭いわけでもないかもしれない。私自身はトリックには感心したし、論理性も高く評価してるし、伏線のちりばめ方も見事だと思うが、本格ミステリを読みなれた猛者にとってはそれほど魅力的なミステリに映らない可能性はある。だが、動機や心理面まで深く斬り込んだ推理は読み応えがある。文学の謎も絡めて、かなり贅沢な謎解きを味わえると感じた。ネタばれになるが、主人公のある秘密には驚かされたし、怪談の用い方にも工夫を感じた。じっくり読み込めば決して予想出来なくない真相でありながら、かつ意外性のある真相というのは微妙なバランスが必要で、そのあたりに作者の繊細さを感じるのである。純粋なミステリレベルはそれほど高くないのかもしれないが、青春小説という大枠の中でのミステリ要素の活かし方のうまさという点で、私はこの小説をミステリとしても高く評価したい。 2018.11.13 Tuesday
十八の夏 (光原百合)
JUGEMテーマ:読書
予備校生の信也は、土手で絵を描く紅美子と知り合い、同じアパートで半一人暮らしを始めるのだが・・・。 (2003.5評)
2018.11.12 Monday
卵の緒 (瀬尾まいこ)
JUGEMテーマ:読書
育生は小学生。 (2003.2 評) 2018.11.05 Monday
「いつでも夢を」(辻内智貴)
JUGEMテーマ:読書
街角で雨に打たれ続けている女。 (2003.3評) 2018.11.03 Saturday
「図南の翼」 小野不由美
JUGEMテーマ:読書 豪商の家庭に育った娘珠晶は、先王が亡くなってから妖魔が徘徊し荒れ果てる恭国を救うべく、自ら王になろうと決意する。 (2002.7 評)
2018.11.02 Friday
「恋火」 (松久淳+田中渉)
翌日、目が覚めると、健太はいつの間にか天国の本屋に来ていて、そこでバイトを始めるのだった。
(2003年1月評)
2018.11.01 Thursday
カラフル (森絵都)
JUGEMテーマ:読書
ぼくは死んで魂になって流されていたが、天使が出てきて「再挑戦」のチャンスを与えるという。 (2003年5月評) 2018.10.24 Wednesday
blog people さんのラッキーサイトに選ばれたみたい
ブログピープルさんの「今日のラッキーサイト」に選んでいただきたいて、大変有り難いことです。 旧サイトからの移行途中で、しかも最近までサボってたので、デザインも中途半端にいじってる最中で、なんか申し訳ないです。 思えば、このブログも開始してから10年以上経ってしまいました。 ああ、月日の経つことのなんと早いことか! 私のおすすめ本 今日は折角、来てくれる人も少しは居そうなので、おすすめ本を挙げておきますね。 解説は超簡単に済ましますが。
まあ、いわゆるタイムスリップ小説なんですけど、好きすぎて20年以上たった今でも座右の書になるぐらい好きな小説です。主人公の女性は人によっては嫌いかもしれないけど、前編通じての前向きな姿勢が気に入ってます。
基本的にSF好きなのですが、この小説は科学的にというより活劇風なところが好きです。深海での攻防がスリル満点で、そうまるで紙芝居を見ているよう!読みながら続きがとっても気になる小説でした。 「虚無への供物」(中井英夫) 連続殺人ミステリの不朽の名作。ミステリ好きでも最近の人はあまり読破してないかもね。めっちゃ分厚いですが、ミステリとしてはとても充実した内容。ただ、昭和30年代の作品なので読みにくさはあります。 「邪馬台国はどこですか」(鯨統一郎) ユーモア歴史ミステリ。歴史好きでミステリ好きで、なおかつ軽く読書したい人におすすめ! 「ドミノ」(恩田陸) 直木賞作家恩田陸さんの最高傑作(だと私だけが思ってる、同意してくれた人にはまだ出会えてない)です。抱腹絶倒のユーモア小説ですと一言でまとめてみる。 「カラフル」(森絵都) ブログ書いてるうちにどんどんおすすめ本が脳裏に蘇ってくるので困るのだが、この「カラフル」は本当に中高生におすすめしたい! ミステリではないけど、ミステリの基本も抑えていて、なおかつ感動的な小説です。 「亜愛一郎の狼狽」(泡坂妻夫) 日本のチェスタトンとも呼ばれる泡坂氏のミステリはどれも凝っていて面白いのですが、中でも名探偵亜愛一郎が出てくるミステリ短編集はよく考えられています。これは日本のミステリ短編集史上でもベスト10に入るぐらいの作品だと思います。この本の中で一番好きな短編は「掌上の黄金仮面」です。 「七姫幻想」(森谷明子) 平安時代の日本の古典を想起させるような美しい物語の数々。一応、ミステリに分類ますが、謎の推理よりもこの世界観が大好きです。 「イニシエーションラブ」(乾くるみ) 最後に挙げるのは、当ブログでも採算取り上げた恋愛ミステリの傑作です。文庫化したあと、これほど話題になるとは想像もしてなかったのですが、あの仕掛けはやっぱりすごいの一言です。完全に脱帽しました。 2018.10.23 Tuesday
「きみにしか聞こえない−CALLING YOU−」 (乙一)
「Calling You」「傷」「華歌」の3編収録。
女子高生リョウは携帯電話を持っていなかったが、頭の中で毎日想像していた。 ある日、リョウの頭の中の電話の着信メロディーが鳴った。 驚きながら、頭の中で電話をとると、相手は野崎シンヤという少年で、向こうも頭の中で通話しているという。 その後二人は度々通話するようになるが・・・ 3編とも超常現象が絡む物語である。 どれもせつなくしみじみとしたストーリーであるが、特に「Calling You」が印象深い。 女子高生の孤独を癒す頭の中の携帯電話。 それがつながり、孤独な相手がいることがわかったら、二人の心が近づくのは当然であろう。 テレパシーだと味気ないが、携帯という手段が新鮮でロマンティックで現代的で乙一らしい発想といえるだろう。 さらに、年上のユミの存在がワンポイントになっていて、この物語を締まったものにしている。 ラストはせつない系の真骨頂。 ちょっと哀しいけど、感動する作品だ。 残りの2編も、心の結びつきを描いた秀作で、全体として本書は見事な出来栄えだと思う。 JUGEMテーマ:読書 2018.10.23 Tuesday
「木乃伊男」(蘇部健一)
長野の大学生、布部正男(ぼく)は、毎年夏の恒例になっている療養生活をしていたが、ある日、隣りのベッドに全身包帯の木乃伊男が眠っていて驚いた。
木乃伊男自身から事情を聞いて安心する正男だったが、布部家には木乃伊男もまつわる恐ろしい言い伝えがあった・・・ 「絵で犯人がわかる全く新しいタイプの推理小説」と銘打たれているが、確かにその通りである。 蘇部氏は「動かぬ証拠」でもかなり実験的試みに挑戦していたが、その作品の出来はあまり良くないという印象がある。 しかし、本書は、短めの長編ながら、非常に面白い試みで成功していると言っても良いだろう。 木乃伊男はだれ?というシンプルな謎ながら、練られたプロットと驚きの連続が巧くかみ合い、意外とまともな作品になっている。 本格ミステリの本流ではないが、非常に面白いアイディア小説である。 絵に必然性のあるミステリなら、こういう形式の本でも評価できる。 蘇部氏の快心の1作であろう。 (2003.01.06評) JUGEMテーマ:読書
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